立体視ムービー(その7)

因みに今回カメラ間隔は-5mm+5mmの10mmとした。これは主観を人間ではなく小人になってもってキャラクターたちと同じステージを共有してもらうための設定。実験の結果で60mmが基本と述べたのは主観に人間を想定した場合で、恐竜なら恐竜なりの、昆虫なら昆虫なりの設定をするべき。
またシーンによっては主観の設定上適切と思われる視差であっても正しく立体視できなかったり、立体視効果が期待できないこともあるので注意が必要。
例えば小さな対象に寄り過ぎた場合の不具合は実験の結果に示した通り。正しく立体視できるようにするために視差を小さくする必要があった。
同様に主観を人間と想定した上で大きな対象を捕らえた場合には立体視の効果が余り得られない。これは対象が大きすぎて右目と左目が捉える画像に差異が殆ど無いからであり、立体視の効果を上げるためには視差を広げる必要がある。

これの例として作例ガミラス艦隊は実は視差-500mm+500mmの1000mmで作成している。


さて30カット分の仕込みも大変だが、左右のカメラからそれぞれムービーを吐き出すたわけだからレンダリングも通常の倍の時間を要する。AfterEffectsでの編集や音入れも考慮すると期限に自信が無くなってくる。
そんな風に作業を進めながらも"寄り"カットが大半で臨場感に欠ける点や、万人受けを狙うあまり奇をてらった表現を避けたことに対して「これで良かったのか?」としばしば疑念が芽生えてくる。何と言っても3人の審査員の中に押井守氏がいることが不安を募らせた。何故ならこの作品には何のメッセージ性も無い!
とは言うものの後戻りする時間など当然無く、突き進むしかなかった。
(続く・・・)